ロスト

大学を卒業してもうずいぶん経つ。自分のなかでは大学のころといまとではそんなに変わりがない、大して時間が経っていない感じがしていたのだけど、そんなことはなかった。もう少ししたら、大学を卒業した年齢の倍の歳になってしまう。今年の冬の終わりはなんだかそのことですごく感傷的な気分になっていた。

もうすぐ、通っていた大学のキャンパスが完全になくなる。通っていたキャンパスはふたつあった。大学生活最初の約1年半メインで通うことになる、一般教養を学ぶキャンパスと、研究室のあるキャンパスだ。一般教養を学んだキャンパスは、約10年前に閉校し、更地になって、いまでは立派な複合施設が建っている。大学の面影はもう全くない。もうすぐなくなるキャンパスは、もうひとつの、研究室があった方だ。

研究室からはいまでも定期的にお知らせなどが届く。4月には、キャンパスの閉校に伴って、キャンパスの周辺を散策しましょうという企画が催される。研究室の集まりにはこれまで顔を出してこなかったけれど、ひさしぶりに行ってみようと思っている。

そういうのも手伝ってか、今年はやけに卒業のシーズンに淋しい気持ちになってしまった。もういいかげん、大学生の延長という歳でもない。仲が良かった友達も、いまどこでなにをしているのかさっぱりわからない。たぶんもう二度と会うこともないひともいると思う。というか、二度と会わないのがほとんどだろう。知らないうちに、勝手にいろいろ失ってしまっている。

できるだけ、なるべく失いたくないみたいな、青臭い気持ちがやっぱりまだどこかにある。じゃあそういう失いたくないものを大切にしてきたんかと言われると、まったくそんなことはないから困る。