死にたさと真逆の夜

爪切男さんと担当編集の高石さんのトークイベントに行った。

福岡(というか東京から離れた地方)でのトークイベントのメリットだと思うのだけど、「東京ではできない話」が聞けることが多々あり、今回もそういった話が聞けてよかった。「ノーツイートで」と頻繁に言われていた話が多かった。書ける範囲でいうと、爪さんはもういまやオナニーを超越したやつをやっているということがわかった。人斬り抜刀斎と呼ばれた緋村剣心明治維新後は不殺(ころさず)を誓い、逆刃刀を握るようになった境地もこういう感じだったのではないだろうか。

高石さんのご配慮もあって、イベント後の打ち上げにもお邪魔させていただき、主催のmeldの方々にも「誰お前」みたいな感じではなくウェルカムな対応をしていただいてありがたかった。meld代表の難波さんという方の熱意と知識、そしていっしょにイベントを運営されていた和泉さん、中村さんという方のおもてなし力がすごい。今回のイベントで初めてその存在を知ったのだけど、福岡のおもしろいことを増やしてくれそうな印象がある。「福岡を変えてえ!」みたいな大風呂敷を広げるんじゃなくて、「おもしろいことがちょっとずつ増えたら、結果的に今よりもっとおもしろい街になるんじゃないの?」くらいのスタンスで、着実におもしろいことを増やそうとしているのかな、と思った。いいイベントでした。福岡で開催してくださってありがとうございます。

打ち上げの場では、「イベントでも言えないようなこと」がいろいろ聞けて、笑いすぎで頬の筋肉がつりかけた。爪さんと難波さんのハイコンテクストなやりとりがすごい。このひと本当にめちゃくちゃ爪さん好きなんだろうなというのがわかったし、そういうのはイベントの空間とか空気にも出ますね。

爪さんの話を聞いてると、『死にたい夜にかぎって』っていう本書いときながら、このひとは死にたい夜とかないんじゃないかと思ってしまう。どういうことがあってもおもしろがる力がすごい。一言で言えば「たくましい」ということになるんだろうけど、そんなものが一言で言えてしまっていいのか。

あと、爪さんは自分のやさしさを否定されていたけど、やっぱり爪さんはやさしいひとなんじゃないかと思う。僕はやさしさって「適切な距離」のことだと思っていて、その適切な距離を即座に判断するのが、爪さんは抜群にうまいんじゃないかなと思った。

1次会が終わり、「ラーメンでも行きますか」ということになって男5人で長浜ラーメンへ。飲み会の〆のラーメンがひさしぶりだったうえに、団体でラーメン屋に入るのもひさしぶりで、静かに「エモい……」と思っていた。死にたさと真逆の夜でした。