拳で語り合っている

最近、Nintendo Switchを買って割とすぐにダウンロードしたストリートファイターのコレクションみたいなやつをやっている。ストリートファイターと名のつく格闘ゲームが12本ほど入っていて、僕は特にスト3をやることが多い。ちょっと前まで格闘ゲームをやる根気すらなかったのだけど、暇だから技の練習をしてみようかなくらいの感じで、10分ほどやってやめるということを1日3回程度やっている。

オンラインでも対戦ができるのだけど、こちらと相手の回線の都合によっては、非常にカクカクとした戦いになってしまう。買ってすぐにおこなったオンライン対戦がいずれもカクカクとしていて、こりゃゲームどころじゃないなと思って敬遠していた。それが最近、回線の相性がよいのか環境がアップデートされたのかわからないけれども、2分の1くらいの確率でスムーズに対戦することができるようになり、たまにオンラインで世界のどこにいるのかわからない相手と拳を交えたりしている。

とはいえ、2020年の3月に、ストリートファイターコレクションの、それもスト3を、オンライン対戦しようとしている人間なんて世界に4人くらいしかいないらしく、対戦で当たるひとが非常に限られている。僕は「r」という名前の日本在住なのか外国在住なのかもわからないひとと対戦することが多く、rさんは本命はケン使いなのだけど、最近の僕たちの対戦は「本命のキャラクター使うのもなんか恥ずいよね」みたいな域に入ってきた。rさんにケンを使われると僕は誰を選んでもほとんど勝つことができない。rさんもそういう、絶対に勝つような試合がおもしろくなくなってきたのだろう。

rさんは最近Qというキャラクターを練習しているらしく、Qになら勝てることがある。rさんがQを選んだときは、僕もそこに本命のキャラクターをぶつけるのは大人気ないなと思い、ユリアンという使い慣れてないキャラクターを選ぶことにしている。

このゲームは仕様として連続で3試合までしかできず、3試合終わると、またマッチングしない限りは同じひとと対戦できない。非常に過疎化が進行しているゲームなので、もう1回マッチングしようとしたら大抵すぐにrさんに当たる。6試合くらいやるともう僕のゲーム欲も満たされているので、電源を切ってやめる。

みたいな生活を最近ずっと続けているかのように書いたけれども、僕とrさんの仲はまだ3日目くらいだ。このゲームではプレイヤー同士の交流を図ったりすることはできないので、拳で語り合う必要がある。僕たちは拳とか脚とか波動という謎の概念の塊とかで、この3日くらい語り合ってきた。向こうも「おっ、お前か」くらいには思ってくれてるんじゃないかと思う。

最近コロナとかなんとかで連日強い概念にさらされており、心が結構すり減ってきたのがわかる。回復する手立てももはやなく、ましてやそれがスト3ごときで癒されることもないのだけど、それでもこの超過疎化したゲームで世界のどこかにいる4人くらいとたまに対戦して、特にrさんという拳で語り合える存在ができたのは、ほんの少しの慰めにはなっている気がする。たぶん2か月後くらいには忘れてそうだけどあんま忘れたくないな、折にふれて思い出したいなと思って、こうやって書き留めている。