<ポスト・トゥルース>アメリカの誕生

ウェブのWIRED20163月~12月に連載されていた、2016年のアメリカ大統領選挙をリアルタイムで追った記事をまとめたもの。「トランプが勝つ」という結果を知りながら読むとおもしろかった。去年の今ごろ、選挙や多数決に関する本を買いまくって読んでいたのだけど、これもそのうちの1冊。読みかけたまま放置してあり、内容がほとんど抜けていたので、読み返したいところを中心に読んだ。

今回の新型コロナとポスト・トゥルースという概念は非常に相性がよいと思っていて(だから読み返したのだけど)、2016年のアメリカ大統領選の過程とそのフィードバックから、今ものごとを考えるうえでのヒントみたいなものがなにかしら見えないものかと思ったのだけど、「やっぱ相性いいな」という確信を強めただけだった。「彼らを鼓舞するのは理性よりも感情であり、情動である」というポスト・トゥルースは、現状をなにかのせいにしたい国民感情と相性がいい。特に、仮想敵として政府は非常に都合がよい。

確かにコロナ対応として政府が進めているものに関しては全部が全部よいと思っていないし、安倍晋三というひとが首相としてよいのかというと、個人的にはそうも思っていないのだけど、だからといって「やることなすこと全てがダメ」とも思っていない。政府を仮想敵にしたいという思いが強すぎると、よい対応に目がいかず、悪いところばかり指摘したくなるのも無理はないのだけど、「事実」に対して批判がなされるといった理性は必要だと思う。「正しい情報(事実)+適切な(理性的な)感情処理」が行われるのが理想的だと思うのだけど、最近特に「『正しい』感情+適切な(恣意的な)情報処理」が行われているのを目にしているような気がする。

結局4年経ってもポスト・トゥルースの「次」にはまだ行けていなくて、案外(いかにもWIRED的で個人的にはあまり好きな論調ではないのだけど)テクノロジーの発展を待たないと、その次に行けないのかもしれないということを考えた。そんな状況で個人が打てる手としては、インターネットを「事実」の収集に活用するにとどめて、他人の感情や情動をできるだけ見ないようにするくらいしか思いつかない。